第八章(1 / 2)
僕が死のうと思ったのは ウミネコが桟橋で鳴いたから,
波の随意に浮かんで消える 過去も啄ばんで飛んでいけ,
僕が死のうと思ったのは誕生日に杏の花が咲いたから,
その木漏れ日でうたた寝したら虫の死骸と土になれるかな,
薄荷飴漁港の灯台錆びたアーチ橋 捨てた自転車,
木造の駅のストーブの前で どこにも旅立てない心,
今日はまるで昨日みたいだ明日を変えるなら今日を変えなきゃ,
分かってる 分かってる けれど,
僕が死のうと思ったのは心が空っぽになったから,
満たされないと泣いているのは きっと満たされたいと願うから,
僕が死のうと思ったのは靴紐が解けたから,
結びなおすのは苦手なんだよ人との繋がりもまた然り,
僕が死のうと思ったのは少年が僕を見つめていたから,
ベッドの上で土下座してるよ あの日の僕にごめんなさいと,
パソコンの薄明かり 上階の部屋の生活音,
インターフォンのチャイムの音耳を塞ぐ鳥かごの少年,
見えない敵と戦ってる 六畳一間のドンキホーテ,
ゴールはどうせ醜いものさ,
僕が死のうと思ったのは冷たい人と言われたから,
愛されたいと泣いているのは人の温もりを知ってしまったから,
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